私の婚約者には好きな人がいる
間水さんは困った顔をして、うつむいた。

「どうかしたのか?」

「この間、海外支店で大きな失敗しただろう?高辻のおかげでかなりの契約先を取り戻せたから、損失は少なくて済んだが。それが原因で中井はひどく落ち込んでいるみたいだ。少し話をきいてやってほしいんだ」

はあっと惟月さんはため息をついた。

「落ち込んだからと言って、どうなるものじゃない」

「そうなんだが。だいぶ参っているんだ。頼むよ」

中井さんが気落ちされているのはわかるけれど、惟月さんには連絡して欲しくなかった。
断って欲しい―――祈るような気持ちでいた。
けれど、惟月さんは間水さんに頼み込まれて、結局、引き受けてしまった。

「わかった」

「そうか!良かった!」

間水さんは喜んでいたけど、私は喜べず、その場から逃げるように立ち去った。
逃げすに連絡しないでと言えばいいだけだったのに―――
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