私の婚約者には好きな人がいる
お見舞い
咲妃(さき)お嬢様、今日はしっかり休んでくださいよ」

「ええ。ごめんなさいね。静代さん」

婚約パーティーが終わり、疲れがたまっていたのか、熱が出てしまい、なかなか下がらず、会社を休んだ。
ぼうっとした頭で虎のぬいぐるみを眺めていた。
あれから、惟月(いつき)さんは中井さんに電話をして励ましたのだろうか。
二人がまた付き合ったら、私はすんなり身を引けるのかな。
お祝いしてくれた人達はどう思うか。

「どうしたら」

いい考えはまったく浮かばず、苦しくて仕方なかった。
風邪薬が効いてきたからか、気づくと一日中眠っていた。

「咲妃お嬢様」

「静代さん?」

夕方になって、ようやく起き上がると、静代さんが冷たいガラスの器にバニラアイスクリームを持ってきてくれた。

「夕飯はお粥にしましたよ。食べられますか?」

「ええ。ありがとう」

「熱はまだありますね。どうしましょう」

「どうかしたの?」
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