私の婚約者には好きな人がいる
「惟月様がお見舞いにいらしていて。お会いしますか?」

「え!?いいえ。こんな格好では失礼ですから」

「わかりました」

静代さんはパタパタと部屋から出て行った。
こんな気持ちのまま、会えない。
ホッとして、横になり目を閉じた。
せめて、会うなら気持ちを落ち着けてから会いたかった。
夕飯は静代さんが作ってくれたお粥を少し食べた。

「下がりませんねぇ」

「微熱だから平気よ。明日には下がるわ」

静代さんは何か言いたそうにしていたけど、言わずにそうですかと言って部屋から出て行った。
静代さんが出ていき、しばらくすると恭士お兄様がやってきた。

「咲妃。入るぞ」

「はい」

恭士お兄様は仕事から帰ったばかりで、まだスーツ姿だった。

「熱が下がらないと聞いた」

「ええ。疲れがでたのかもしれません」

恭士お兄様はため息を吐いた。

「咲妃。お前はいつも無理をした時に熱を出すだろう?なにがあった」
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