私の婚約者には好きな人がいる
清永商事前まで車で送ってもらうと、ちょうど出勤の時間帯らしく、スーツをきた人達が大勢、ビルの中に入って行くのが見えてわくわくした。
まるでドラマの中みたい。
いつもは窓の外から眺めるだけの光景だったのにあの中に自分も混じるのかと思うと、緊張より楽しみの方が大きい。
清永商事本社のの入り口前に運転手さんは黒塗りの車を寄せてくれた。
「いってらっしゃいませ。咲妃お嬢様」
「いってまいります」
「お仕事頑張ってくださいね」
「ありがとう」
私がまだ幼い頃から、車の運転をしてくれている運転手さんで気心が知れていて、かけられる言葉も優しい。
車を降りてビルの中に入ると、スーツをきた集団がずらりと並んで待ち構えていた。
「よく来たね!咲妃ちゃん!」
その集団の中に惟月さんのお父様である清永のおじ様がいて、待っていてくれた。