私の婚約者には好きな人がいる
もう姿を見ているのに会わないこともできない。

「静代さん。あがっていただいて」

静代さんはリビングに案内し、お茶を用意してくれた。
手土産にプリンを頂いたので、それも出してくれたけれど、惟月さんの顔が真剣な顔をしていたので、手に取り、食べるような空気ではなかった。

「熱は下がったのか?」

「はい。今日は念のため、お休みをいただきました」

「そうか」

「あの、お仕事は大丈夫ですか?」

いつもなら、忙しくしている時間だった。

「昨日、会えなかったから、どうしているか気になって。それに恭士さんやご両親がいるとなかなか話せないだろう?」

「確かにそうですけれど」

「婚約パーティーが終わってから、元気がなかったのは何か理由があるのか?」

私は気づかれないよう明るくふるまっていたのに惟月さんは気づいていたらしい。
言いたくはなかった。
だまりこんでいると、惟月さんは言った。
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