私の婚約者には好きな人がいる
「正直に言っていい。嫌いになったとか―――」

「違います!」

大きな声を出した私に惟月さんは驚き、目を見開いた。

「私、惟月さんと間水さんがお話になっていたのを聞いてしまってっ……」

「待った」

惟月さんはあきれた顔で私を見ていた。

「どこから、聞いていたかは知らないが、中井結彩とは確かに付き合っていた。だが、きちんと別れている。その上で俺は婚約の話を進めた。ここまではいいな?」

「は、はい」

淡々とした口調で説明してくれたけど、まるで業務連絡のようだった。

「別れた後は一度も連絡をとっていない。間水に頼まれたけれど、様子がおかしいことの方が気がかりですっかり忘れていた。嫌なら、連絡はしない。他に質問は?」

「な、ないです」

「もう終わったことだったから、説明はしなかった。気にしているとは思っていなかった―――」

「気にします……!私は惟月さんの婚約者でずっと好きだったんです」
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