私の婚約者には好きな人がいる
「おじ様。おはようございます」

「おはよう。白のスーツがよく似合っているね」

「ありがとうございます」

静代(しずよ)さんの見立ては間違いなかったようで、ほっとした。

惟月(いつき)は忙しいらしくてね」

「仕方ありませんわ。お仕事ですから」

おじ様の周りには汗をふきながら、何人も人がいた。

高辻(たかつじ)のお嬢様、おはようございます」

「お父様やお兄様によろしくお伝えください」

「はい。伝えておきます」

同じことを繰り返し言われて、何度も返事をした。
お父様とお兄様は高辻(たかつじ)グループのかなめで、特にお兄様はすごく仕事ができると静代さんが褒めていた。
好き嫌いの多さと朝食を抜くのさえ、なければよろしいんですけどねと付け加えて。

「あの、それで……清永のおじ様。私はどのようなお仕事をすればよろしいんですか?」

憧れのコピー?
それともお茶くみかしら。
書類を作るのも素敵よね。
さあ!私にお仕事をお願いしますっとドキドキしながらおじ様の言葉を待った。
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