私の婚約者には好きな人がいる
「お料理教室に通っていましたので、プロの腕前には程遠いですけれども、人並みには作れると思います」

「ふうん。お弁当なんて作っていじらしいわね。そうやって、惟月にとりいったの?」

「そういうわけでは……」

中井さんは笑っていた。

「惟月と正式に婚約をして、もうじき、結納なんですってね」

「は、はい」

間水さんから聞いたのか、そこまで知っていることに驚いていると、中井さんは目を細めて私を見下ろした。

「それで、惟月と恋人らしいこともしないで、結婚?惟月も可哀想だわ」

「そんなことないです!ちゃんと動物園とか、遊園地にも一緒に行きましたし……」

土曜日のお弁当のお礼は続いていた。
その楽しかったデートを思い出すだけで、幸せな気持ちになれる。
それなのに中井さんは声をたてて、笑いだした。

「なにそれ、小学生?動物園や遊園地なんて。あなた、大人の女性として惟月から見られてないじゃない」

顔が赤くなるのが、わかった。

「その程度なの?惟月はやっぱりあなたのこと、なんとも思っていないのね」

何も言い返せず、視線を床に落とした。
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