私の婚約者には好きな人がいる
ドアが開き、不機嫌そうな惟月さんと顔色の悪い間水さんが入ってきた。

「悪かったな。惟月」

謝っていたけれど、惟月さんは間水さんに一言も口を聞かず、中井さんを見て言った。

「出て行け」

「私も話がしたいの。今日の夜、空いてるでしょ?」

「話すことは何もない」

「ね?今日だけでいいから」

中井さんが上目遣いで惟月さんに言った。

「断る」

「惟月……」

悲し気な顔で中井さんが目を伏せた。

「一度だけでいいの。そしたら、ちゃんと惟月から距離を置くから」

はぁと惟月さんは溜息をついた。

「わかった。ただし、間水。お前も同席しろ」

「ああ」

行かないで欲しい―――でもそう言えずに三人を眺めていた。
中井さんに言われた言葉がつきささり、不安な気持ちでいっぱいだった。
けれど、惟月さんにその不安を口にすることはできない。
私は彼の婚約者だけど、彼の恋人ではなかったから。

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