私の婚約者には好きな人がいる
「……惟月さん!」
思わず、駆け寄り抱きついた。
「失礼します。行こう」
私の手を取り、惟月さんは階段を降りた。
「待て!」
恭士お兄様の声が背中から、追ってきていたけれど、惟月さんは振り返らず、そのまま家の外に連れ出すと車に乗せるとすぐに車を出した。
着の身着のまま、何も持ってこなかったことに気づいたけれど、惟月さんは気にしていなかった。
黙って車を走らせると、周辺に緑が多い静かな地域に建つ、綺麗なマンションに連れてきた。
「清永のお家で暮らしているんじゃないんですか?」
「いや、ずっとマンションだ」
オートロックのマンションで、最上階直通のエレベーターに乗った。
惟月さんが住んでいるのは屋上にあるペントハウスで眺めがよく、中は吹き抜けになっており、二階がある。
「眺めがいいですね」
「ああ。高校生の時に祖父から買ってもらった」
「高校生!?」