おもいでにかわるまで
そうして堀田の結婚式での報告通り、勇利と妻の瞳がシンガポールに渡ってから1年以上が過ぎた。マンションのバルコニーから瞳の声がする。

「勇利君、流星群見えそうにないみたい。」

「まじで?日本では今頃がピークなのにね。」

勇利はそのまま瞳の横に向かった。

「なにまた今日届いた招待状見てるの?」

「だって俺ほんと嬉しくてさあ、ヤバいよ。だから今回日本に帰るタイミングこれに合わせるから。」

「いいよ。特別に大事な友達なんだよね。」

「知り合いの結婚でここまで嬉しいのはないね。周りの全員に心から良かったな、って思われるこじらせカップル。」

「良かったね。」

「二人共超好きなんだよね。それに先輩や後輩にも会いたいし、あー、まじ楽しみ死にそう。」

「良い友達沢山だね。勇利君らしい。」

「まあね。あ、見えた!夜景が瞳の瞳に流星群みたいに流れてる。」

「特にうまく言えてはないよ。」

あはは。と笑いながら軽くキスをした。

もしも、もしもを繰り返しながら誰もが大人になっていく。そして過去の鮮やかな記憶はゆっくりとぼやけていき、濃くて太かった線もやがては点になりその数は減っていく。

でも忘れない。

昨日今日明日。

それを繋いできたのは誰にでも起こり得る、星屑の様な無数の奇跡の集まりなんだと言う事を。

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