お嬢様は恋したい!
第3章
初日は、色々と盛りだくさんだったが、始まってしまえば、毎日仕事に追われるようになった。
私と言えば、毎日少しだけ残業代が発生しないくらい超過勤務して自分のご褒美とばかりに社食で夕ご飯を食べて帰るようにしている。
残業代が夕ご飯と思えば、仕事も頑張れるってものよ。
お父様が、今の私を見たらびっくりするでしょうね。
金銭感覚も違うし、シャンプー代がもったいないからと腰まであった髪をバッサリ肩口で切っちゃったし。
鈴木主任は、私の仕事ぶりを認めてくれたようで、普段はそっけないけれど優しいし、時々餌付けとばかりにランチに連れて行ってくれるようになった。
「主任は、なんで私に頻繁にランチご馳走してくれるんですか。」
「そりゃこんなちっちゃい子が、貧乏で頑張って仕事してひとりで生活してたら、かわいそうだろ。」
「ひどっ。これでも大学卒業した22歳の女の子ですよ。」
「そっか、そっか。」
私はすっかり妹か娘扱いされている。
そして、働き始めて2週間ほど経った金曜日。
初めての合コンですっ。
浅田さんと島本さん、それに総務課の三宅さんと加藤さんという女性陣に混ぜてもらい5対5。
男性陣は、浅田さんの同期で製造部の石田さんというちょっと軽いおにいさんとお友だちや後輩と平均年齢は25歳くらいなメンバー。
私は愛し愛される彼氏は欲しいけれど、11月末までにプロポーズしてくれなきゃ意味がない。
それを考えると年齢的に今日のメンバーは、結婚はまだ考えてくれないだろう。
「ども。製造二課の山田っす。」
目の前の男性に挨拶され、とりあえず話すことにした。
「営業事務の派遣で高橋です。」
「かったいなぁ。高橋何ちゃん?」
「香です。」
「かおるちゃんね。よろしくっ。」
同じ会社とは言え、建物も勤務体制も違う製造部は、男性が多いしなかなか出逢う機会もないそうで、「彼女欲しいんだよね」なんて軽く言われる。
「山田さんは…」
「こーた。repeat after me。」
「こーたさん?」
「さんは、いらない。こーたでいいよ。」
「こーた…くん…は、趣味とかお休みの日は何をしていますか。」
「んとね。休みが土日じゃないから、ドライブとかひとりで出かける事が多いかな。」
「香ちゃんは?」
「今は、アパートの近くを散策するくらいです。」
「香ちゃんなら、おしゃれな雑貨屋とか行くんだろうね。」
お金使わないで過ごせるし、途中のスーパーで特売品を買って帰るだけなんだけど。
部署も違うし、それほど会うこともないだろうから、とりあえず顔見知り以上友達未満になるかなと思ってしまうのは、たった数日で私が、鈴木主任といる時間が多いせいで、あの人を基準にして比べてしまうからなんだろうか。
「ねぇ、香ちゃんはどういうタイプの男が好み?」
こーたくんは、私の横に移動して来て、ぐいぐいと近寄ってくる。
「同じものを見て同じような気持ちになれる…価値観の似た人がいいです。」
「顔は?俺、自分で言うのも何だけど、結構イケてると思うんだ。」
「こーたくんは、かっこいい…です。」
見た目はアイドルグループにいそうな感じだし、調子もいいから土日休みで女子が多い職場ならとっくに彼女がいてもおかしくなさそうだ。
「だろ、だろ。香ちゃんにおすすめ物件だよ。」
私としては、その軽さがちょっと…なんだけど。
「はぁ。」
「ほら、ほら、俺たちの出会いにかんぱ〜い。」
なんとなくグラスを合わせるとにっこり笑われた。
「二次会どうする?」
元々同じ会社だから、みんなよそゆき感はなく、職場の飲み会のノリで、相談をしてカラオケ行こうと盛り上がっている。
でも今日の使えるお金がもうない私は戦線離脱を伝えた。
「すみません。帰ります。」
「えー、行こうよ。」
こーたくんは、誘ってくれるけど、みんなでワイワイ行く気分じゃない。
「ごめんなさい。」
一言謝って、駅に向かって歩き出した。
「待ってよ。」
しばらくひとりで歩いていたらいきなり肩を掴まれる。
振り返るとこーたくんが、いた。
「こーたくん…」
「みんなでカラオケより、ふたりで抜けたかった?」
覗き込んでくるこーたくんの瞳がギラギラしていて、ちょっと怖い。
「そういうわけじゃ…」
「じゃ、行っちゃうか。ふたりきりになれる場所。」
「あ、あの…」
こういう時、なんて言うのが正解?
いままで経験がなく、恋愛偏差値がめちゃくちゃ低い私には断る言葉も行動も思いつかない。
そうこうしているうちに、肩を抱かれ歩くことを促されてしまう。
「香ちゃんは、ホテルと俺んちどっちが好き?」
「へ?」
いくら恋愛偏差値が低くても、それがどういう意味で何をするつもりなのかわかる。
もしかしたら、どこかもう一軒連れて行かれて、付き合おうとか言われて、キスとかされちゃうかもと思っていたけど、会ったその日にまだよく知らない相手といきなりそういうのって…
私にはムリ!
「わ、私…」
「ちょうど駅の手前にラブホあるから、行こっ。」
ぐいぐいと押せ押せのこーたくんに私の処女は奪われちゃうのかな。
それなら、鈴木主任の方が良かったな。
あの人は私をそういう対象には見てくれないだろうけど。
私と言えば、毎日少しだけ残業代が発生しないくらい超過勤務して自分のご褒美とばかりに社食で夕ご飯を食べて帰るようにしている。
残業代が夕ご飯と思えば、仕事も頑張れるってものよ。
お父様が、今の私を見たらびっくりするでしょうね。
金銭感覚も違うし、シャンプー代がもったいないからと腰まであった髪をバッサリ肩口で切っちゃったし。
鈴木主任は、私の仕事ぶりを認めてくれたようで、普段はそっけないけれど優しいし、時々餌付けとばかりにランチに連れて行ってくれるようになった。
「主任は、なんで私に頻繁にランチご馳走してくれるんですか。」
「そりゃこんなちっちゃい子が、貧乏で頑張って仕事してひとりで生活してたら、かわいそうだろ。」
「ひどっ。これでも大学卒業した22歳の女の子ですよ。」
「そっか、そっか。」
私はすっかり妹か娘扱いされている。
そして、働き始めて2週間ほど経った金曜日。
初めての合コンですっ。
浅田さんと島本さん、それに総務課の三宅さんと加藤さんという女性陣に混ぜてもらい5対5。
男性陣は、浅田さんの同期で製造部の石田さんというちょっと軽いおにいさんとお友だちや後輩と平均年齢は25歳くらいなメンバー。
私は愛し愛される彼氏は欲しいけれど、11月末までにプロポーズしてくれなきゃ意味がない。
それを考えると年齢的に今日のメンバーは、結婚はまだ考えてくれないだろう。
「ども。製造二課の山田っす。」
目の前の男性に挨拶され、とりあえず話すことにした。
「営業事務の派遣で高橋です。」
「かったいなぁ。高橋何ちゃん?」
「香です。」
「かおるちゃんね。よろしくっ。」
同じ会社とは言え、建物も勤務体制も違う製造部は、男性が多いしなかなか出逢う機会もないそうで、「彼女欲しいんだよね」なんて軽く言われる。
「山田さんは…」
「こーた。repeat after me。」
「こーたさん?」
「さんは、いらない。こーたでいいよ。」
「こーた…くん…は、趣味とかお休みの日は何をしていますか。」
「んとね。休みが土日じゃないから、ドライブとかひとりで出かける事が多いかな。」
「香ちゃんは?」
「今は、アパートの近くを散策するくらいです。」
「香ちゃんなら、おしゃれな雑貨屋とか行くんだろうね。」
お金使わないで過ごせるし、途中のスーパーで特売品を買って帰るだけなんだけど。
部署も違うし、それほど会うこともないだろうから、とりあえず顔見知り以上友達未満になるかなと思ってしまうのは、たった数日で私が、鈴木主任といる時間が多いせいで、あの人を基準にして比べてしまうからなんだろうか。
「ねぇ、香ちゃんはどういうタイプの男が好み?」
こーたくんは、私の横に移動して来て、ぐいぐいと近寄ってくる。
「同じものを見て同じような気持ちになれる…価値観の似た人がいいです。」
「顔は?俺、自分で言うのも何だけど、結構イケてると思うんだ。」
「こーたくんは、かっこいい…です。」
見た目はアイドルグループにいそうな感じだし、調子もいいから土日休みで女子が多い職場ならとっくに彼女がいてもおかしくなさそうだ。
「だろ、だろ。香ちゃんにおすすめ物件だよ。」
私としては、その軽さがちょっと…なんだけど。
「はぁ。」
「ほら、ほら、俺たちの出会いにかんぱ〜い。」
なんとなくグラスを合わせるとにっこり笑われた。
「二次会どうする?」
元々同じ会社だから、みんなよそゆき感はなく、職場の飲み会のノリで、相談をしてカラオケ行こうと盛り上がっている。
でも今日の使えるお金がもうない私は戦線離脱を伝えた。
「すみません。帰ります。」
「えー、行こうよ。」
こーたくんは、誘ってくれるけど、みんなでワイワイ行く気分じゃない。
「ごめんなさい。」
一言謝って、駅に向かって歩き出した。
「待ってよ。」
しばらくひとりで歩いていたらいきなり肩を掴まれる。
振り返るとこーたくんが、いた。
「こーたくん…」
「みんなでカラオケより、ふたりで抜けたかった?」
覗き込んでくるこーたくんの瞳がギラギラしていて、ちょっと怖い。
「そういうわけじゃ…」
「じゃ、行っちゃうか。ふたりきりになれる場所。」
「あ、あの…」
こういう時、なんて言うのが正解?
いままで経験がなく、恋愛偏差値がめちゃくちゃ低い私には断る言葉も行動も思いつかない。
そうこうしているうちに、肩を抱かれ歩くことを促されてしまう。
「香ちゃんは、ホテルと俺んちどっちが好き?」
「へ?」
いくら恋愛偏差値が低くても、それがどういう意味で何をするつもりなのかわかる。
もしかしたら、どこかもう一軒連れて行かれて、付き合おうとか言われて、キスとかされちゃうかもと思っていたけど、会ったその日にまだよく知らない相手といきなりそういうのって…
私にはムリ!
「わ、私…」
「ちょうど駅の手前にラブホあるから、行こっ。」
ぐいぐいと押せ押せのこーたくんに私の処女は奪われちゃうのかな。
それなら、鈴木主任の方が良かったな。
あの人は私をそういう対象には見てくれないだろうけど。