お嬢様は恋したい!
明るく楽しい人なんだけど、この茶化した言い方が、結婚相手にするには信用できるのか不安になる。

遊びとか気楽な付き合いならいいかもしれないけれど、私には時間がないから… 

「とりあえず、お試しする?」

専務の事はまだよく知らないし、とりあえず身体の相性は別にしても普通のデートとかしてもいいかもしれない。

だって私は自分で認めたくはないけど、鈴木主任に惹かれている。

でも鈴木主任には『姫』と専務が呼んでいた何年もお付き合いしている大切な彼女?婚約者?がいるらしい。

そして私は、彼にとって心配な妹か娘のような存在で…

鈴木主任が振り向いてくれないのなら、別の人を探さなきゃ。

あと2ヶ月、まずは専務にかけてみよう。

ここまでたぶん1分かからない時間だと思うが、頭の中で必死に考えた。

「はい。とりあえず、まずは普通のデートからお願いします。」

「ん、了解。よろしくね、香ちゃん。」

まだ鈴木主任は、心配そうな顔をしていたが、私が了承した事で、渋々納得したようだ。

「陸、香を泣かしたら俺が許さないからな。」

「分かってるって。これからは、プライベートでは陸斗って呼んでね。それで香ちゃん、連絡先交換しよっか。」

専務に…陸斗さんに言われて、そこで気がついた。

私、スマホを持っていない。

「ごめんなさい。スマホないんです。」

「今日、持ってないの?」

「いえ…」

「え?もしかして自分のスマホを持っていないってこと?」

「はい。」

「じゃ、じゃあどうやって連絡取って…」

「私の連絡先で会社に登録してあるのは、派遣会社の代表番号です。住んでいるのも寮なので管理人室の電話を借りてかけられますし。」

自宅を出るときにスマホは、置いて来た。

お父様にGPSで動向を確認されたくないから。

戻ればあるからと今は契約もしなかった。

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