お嬢様は恋したい！

第８章

「お父様、ただいま帰りました。」

「おかえり。半年で、ずいぶんと大人びたね。疲れただろう。部屋で休むといい。」

「あの…お父様。」

「ひとりで帰ってきたと言うことは、話を進めていいと言うことだろう。かずまくんから香子がいない間に何回か会いたいと打診があったがいなかったから病気療養中と伝えてある。落ち着いたら、笠松家に連絡しような。」

部屋に戻って、半年ぶりの天蓋付きベッドに倒れ込む。

あのホテルのより立派で高いだろう見慣れたはずのこれより、あっちの方が良く思えるのは、一誠さんの思い出があるからかな。

いつの間にか眠って夢を見ていた。

『おい。香、これうまいぞ。』

「私のおかず取らないでくださいよ。」

『外食もいいけど、少しくらい料理作れるようになれよ。』

「まだ本気出してないだけですよ。」

『嫁に行けないぞ。』

「いつかびっくりさせますからね。」


目が覚めて、薄暗い自分の部屋にいる事に寂しさを感じた。

やっぱり会いたいよ。

翌日から花嫁修行が再開された。

「お父様。私、お料理を習いたいんですけど。」

「かずまくんのところも家政婦がいるから料理は困らないぞ。」

「たまには、手料理で旦那様を喜ばせたいです。」

そう言えばお父様は、「よしよし」と算段してくれる。

夢の中で一誠さんに言われたからなんて理由は言えないけどね。