お嬢様は恋したい！

私を診てくれたのは、うちの家族がお世話になっている内科医の本田医師。

それこそ私が赤ちゃんの頃から知っているし、往診してくれる優しいおじいちゃん医師だ。

「香子、大丈夫か。」

「お…とう…さま…」

優しく髪を撫でてくれるお父様は、婚約話以外では結構私に甘い。

だからこそ半年も自由にさせてくれたと思う。

婚約は、お父様レベルの話じゃなくお祖父様と笠松家の話なので、お父様も意見できなかったらしいから。

「遼一くん、香子ちゃんは最近だるいと言って、よく寝ていたそうだね。」

本田医師に聞かれたお父様が頷く。

「香子ちゃん。最後の生理はいつ？」

「１１月の１3日で…遅れてますね。貧血のせいかしら？」

「さっきの尿検査の結果だと香子ちゃん、妊娠しているよ。身に覚えある？」

「は？医師(せんせい)どういうことですか。」

お父様が本田医師に詰め寄った。

「香子ちゃんの卵子と誰かの精子が出会って、受精して着床したって事だね。おめでとう…でいいのかな？」

私のお腹に赤ちゃん？

一誠さんの子どもがいるの？

「か、香子。相手は誰だ。わかっているのか、あとひと月でお前は結婚…させられないな。お祖父様に話さないとだな。」

お父様がおろおろしている。

そうよね。嫁入り前の娘が、いきなり妊娠しているなんて。

「お父…さま。」

「百合子、香子から話を聞いておいてくれ。お祖父様とかずまくんの対応を考えてくる。」

バタバタと出かけるお父様を見送ると本田医師も帰り支度を始めた。

「香子ちゃん、あらためて産婦人科に受診するようにね。お大事に。」

「せんせい。ありがとうございます。」

本田医師が帰り、ほっとできる

…はずがなかった。


「香子、どういう事なの。ちゃんと説明しなさい。」

お母様は普段もの静かだが、怒るとめちゃくちゃ怖いのだ。

ある意味、うちの女王様。

まぁ比較的、私には優しい…はず。

だよね？