お嬢様は恋したい!
第2章
あれから3ヶ月。

大学の友人、田沼英美香を頼り、英美香の叔母が経営する派遣会社ソラーレのスタッフに潜り込み、世間知らずな私でもなんとか普通の会社員ができるレベルに仕込んでもらった。

私がどれだけ贅沢で甘かったかを理解できるくらいに社長の美月さんはスパルタだった。

「香ちゃん、黒川工業って会社から営業事務の募集来たけど、行ってみる?」

「はい。どのくらい役に立てるか分かりませんが、やってみたいです。」

だって、ここでの研修期間はお給料貰えるけど、女性ばかりだから私の野望、社内恋愛が出来ないんだもの。

「うちの寮から通勤でいいわよね。」

「はい。もちろんです。」

3ヶ月ですっかり慎ましい生活に慣れた私は、家賃タダでワンルームな寮から出たら、生活できない、余計な出費にかけるお金はないと美月さんに笑顔で応えた。

派遣される事になった黒川工業は、本社社員50人ほどと別棟の工場に150人ほど勤務する機械部品の製造会社らしい。

「派遣の高橋香(たかはしかおる)さんです。」

配属先の営業課は、課長、主任、営業の男性社員が3人と営業事務が女性社員2人に私を入れて3人のこじんまりとした部署だった。

「高橋さんは育休中の松田さんの代わりで11月いっぱいまでの勤務になる予定ですが、頑張れば契約社員の登用もあるから、よろしくね。」

課長は、そう言ってくれたけど、私はお父様との約束というか、勝負があるので3ヶ月はちょうど良かった。

「よろしくお願いします。」

「高橋さんには、鈴木主任と組んで仕事をしてもらうから、あとは主任に聞いてくれる。」

「はい、分かりました。」


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