お嬢様は恋したい！
私、ひとりでチビちゃん育てられるかな？
とぼとぼとマンションに戻るとエントランスに少し焦った様子の細身の男性が立っていた。

「川田さん？」

「部屋にいないから心配しました。」

「何か用？」

「私は社長の秘書であって高階家の執事でもなんでもないんですけど、親バカ(社長)が公私混同するから、この私がわざわざ京都までクリスマスイブに出張させられる羽目に…」

「イブの予定はなかったの？」

「残念ながら、ちょっといいなと思っていた女性との約束、キャンセルですよ。責任取って欲しいですよね。」

「あら申し訳なかったわね。」

「棒読みはやめてください。」

「それでわざわざイブに京都の私を訪ねて来た本題は？」

「真顔で話を変えるなっ。」

「変えてないでしょ。」

「そうですね。私のクリスマスの予定が潰れた事は本題ではありませんね。失礼しました。」

自分の方が悪かったと素直に謝ってくる川田さんが、ちょっといつもと雰囲気が違ってみえて縋りたくなってしまったのは、人恋しかったせいかもしれない。

「私、川田さんに恋すれば良かったかな。」

つい言葉が溢れてしまった。

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