お嬢様は恋したい!
「みんな、注目!今日から6月末まで事務補助のパートに入る高階さんです。」

総務課と人事課の入る部屋の入口で、千葉さんが皆さんに声をかけた。

「高階香子です。よろしくお願いします。」

パチパチとまばらな拍手をもらい、千葉さんに案内されて入口からすぐの書類の山が積まれた席に着いた。

ふと黒川工業でも最初は、書類の山が出来ていたなと一誠さんの顔がよぎった。

とにかく仕事を頑張ろう。

気持ちを切り替えて書類に目を通す。

ごちゃごちゃに積まれたものを物品申請、社員の届出書類、採用募集関係、経理関係に仕分けて急ぐ順にまとめていく。

「ごめんね。ひとり辞めてひとり育休のせいで滞っているものが全部そこに積まれちゃってるの。」

隣の席のアラサー、仕事が出来そうできれいめなお姉さんが声をかけてくれた。

「いえ、前の職場でも書類の山と戦っていましたから大丈夫です。」

「そう?私、葉山朱音。よろしくね。」

「葉山さん、よろしくお願いします。ところでいらないレターケースかボックスないですか。」

「えっと加藤くん。高階さんにレターケース持ってきてあげて。」

「はーい。」

「何するの?」

持ってきてもらったレターケースに物品、請求書、人事届出、その他とインデックスを付けて入口に向けておく。

「仕分けするのが大変になるので、書類を持って来た人に分けて入れてもらおうと思うんです。」

レターケースの上には箱を乗せて「至急」と赤で書いておく。

こうしておけば、急ぎの書類も早く目を通せるだろう。

机の上に元々あった書類は、自分で仕分けた種類ごとに箱に入れて、処理を始めた。

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