お嬢様は恋したい！
「いいのか。」

「はい。ところで一誠さんは、なぜ京都に？」

「実家に戻って父親の仕事を手伝うようになったんだ。今日は商談。終わって一息入れたくてここに入った。香は？」

「私はいまこの近所に住んでいます。」

「あいつ高階の社員だよな。転勤に着いてこっちに来たのか。」

どう答えようか戸惑って曖昧に笑う。

「一誠さんは婚約者さんと結婚したんですよね。幸せですか。」

「いや、婚約は解消したんだ。俺は中途半端な気持ちで結婚するべきじゃないと思ったし、相手側も事情があって解消したいと言われてさ。」

「そ、そうなんですか。」

「俺はあの日、香の事を軽い気持ちで抱いたわけじゃない。起きたら婚約解消するから待っていて欲しいと伝えるつもりだったんだ。」

頭が真っ白になった。

私がちゃんと一誠さんと話をしていたら、違ってたの？

「ごめん。いまさら言っても仕方ないよな。香はあいつを選んで結婚したんだろ。それに子どもいるんだよな。おめでとう。幸せにな。」

私が呆然としているなか、一誠さんはコーヒーを飲むと頭を軽くポンと叩いて出て行ってしまった。

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