お嬢様は恋したい!
第11章
8月18日の早朝、私は女の子を産み一叶 いちかと名付けた。

一叶は、ふにゃふにゃと夜泣きをよくするから大変だけど秀介さん…川田さんって呼ばないと返事してくれない…が手配してくれた元看護師のシッター兼家政婦の前田さんがフォローしてくれるから世のママ達より絶対に楽をさせてもらっている。

一叶がいてくれるから幸せだと思える今が嬉しい。

そのうち預けて働かないといけないのはわかっているのに、こんなかわいい一叶と離れていられる自信がない。



季節はあっという間に秋を通り越し、街はクリスマス気分になっていた。

「香子様、お父様から年末は東京に戻らないのかと連絡がありました。」

「断っておいてください。まだ一叶が遠出は無理だって。」

「かしこまりました。それでは年末年始はご両親がこちらに泊まられる準備をしておきます。」

たしかに私が行かないとなれば、私と一叶に会いたい2人が来ないはずがないか。

「そういえば、前田さんはお父様に雇われているのよね。なんで旦那様とか言わないの。」

「私は高階家に雇われているわけじゃ…い、いえ、その…」

「前田さん!」

私が強く言うと前田さんは話してくれた。

「私は川田さんに頼まれて、こちらに参りました。」

「手配してくれたのは知って…まさか…」

「私の雇用主は、川田秀介様です。香子様と一叶様が快適に過ごされるようにと。」

秀介さんに慌てて電話をした。

『はい、川田です。お嬢様、暇なあなたと違い、私はあなたではなく社長の秘書なので電話されてもすぐに出るとは限らないんですが。』

相変わらず物言いは、きついのよね。
 
とても優しいくせに。

「前田さんからあなたの息がかかっていると聞いたから、クビにしたわ。こっちで新しく雇うから、それじゃ。」

私もあなたに寄りかからない。

あなたの手を離したのは私なんだから。

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