お嬢様は恋したい!
「香子、聞いていて?」

思考にはまっていて、お母様の話がお留守になっていたわ。

いけない、いけない。

「何?」

「年末年始は無理でも春くらいには一度、高階のお祖父様とお祖母様に一叶を見せに行きなさいって言ったの。お祖父様には婚約解消でご迷惑をお掛けしたし、お祖母様はこっちまで来るのも大変だからね。」

「はい。お祖母様の具合はどう?」

「お歳だからね。手術はせずに自宅で過ごす事にしたそうよ。」

私が幼い頃、一年の大半をお祖父様の家で過ごしていたし、仕事が忙しい両親に代わって私の面倒をみていてくれたのは、父方の祖母…お祖母様だった。

高齢になってから癌が見つかり、今は無理をせず余命に従うというお祖母様の希望に沿うようにしている。

もちろん最初は、お祖父様も自分の持てる力を全て使っても助けたいと思っていたが、元々あまり身体が丈夫ではないお祖母様が、治療で辛そうな顔をするのを見て、お祖母様の意思を尊重するようなったのだ。

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