お嬢様は恋したい!
お祖母様は、いつまでもかわいくてチャーミングな人だ。

午前10時が近くなるとお祖母様が、色々と指図しはじめた。

映画監督にでもなったつもりか私の立ち位置や動線、客間の和室の中の家具の位置や出されるお茶にまで家政婦の田上さん達に指示を出しながら頷いている。

「そうね、香子は別室待機にしましょう。あとから入ってきて挨拶をした後、2人で見つめ合う。キャー!ステキだわ。」

お祖母様は、恋愛小説やドラマみたいに期待しまくりのようで、逆に冷静な目で見てしまう。

いくらなんでも相手が私だと分かっていたお兄ちゃんが、一度こちらからお断りして子どももいるとなれば、そういう気持ちになりっこないのに。
 
「どうしたの。」

「あ、何でもないです。お祖母様。」

「一叶ちゃんは、大丈夫かしら。」

「寝ちゃったので、シッターさんが見てくれています。」

いきなり一叶連れてというわけにもいかないと思っていたので、寝てくれて良かった。

お祖母様の指示で、私はキッチンからお茶を運んでくると言うシュチュエーションを採用させられた。

お茶は、私がら京都みやげに持って来た宇治の煎茶。

お茶請けは、お祖母様お気に入りの栗羊羹。

お兄ちゃん、甘いの大丈夫なのかな。

「だからね。香子ちゃんもあなたに会いたいって楽しみにしているのよ。」

「そうですか。」

ほがらかに、お祖母様と仲良さそうに話している声が聞こえてくる。

お祖母様への接し方でお兄ちゃんは、優しいままなんだろうなと思えた。

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