お嬢様は恋したい!
そうよ。喫茶店で会った時に、あの日、私に言うつもりだったと言われたのだった。

「その間にあいつに掻っ攫われて、なんでざまだか。」

「あいつ?」

「高階の…川田?お前の旦那だろ?」

「川田…秀介さんとは結婚していないよ。」

「でも子どもいるだろ?」

「それは…」

私が説明しようとした時、少し大きな泣き声が聞こえて思わず立ち上がった。

「一叶ちゃん、起きたから連れて来たわよ。」

お祖母様に抱かれグスグスと泣く愛娘を受け取り手早く別室に行き、オムツを変えて、おっぱいを飲ませて一叶と共に一誠さんのいる部屋に戻るとお祖母様と一誠さんが楽しそうに会話していた。

「でね…あら、香子ちゃん。もう大丈夫?」

「うん。一誠(かずま)さんにちゃんと話さないといけないから。」

「かお、さっきの話だけど…」

「この子が娘の一叶よ。女の子はパパに似た方がいいらしいけど、よく似ているでしょ。」

まじまじと一叶を見つめる一誠さんに、にぱーっと笑う一叶。

「えっ、それって…」

「川田さんは、ひとりで産むつもりだった私のフォローをしていてくれたの。」

「あのときの?」

「しかないでしょ。私、ほかに経験ないんだから。」

「い、いや…疑ってる訳じゃなくて、なんで言ってくれなかったんだ。」

慌てる一誠さんを見て、こちらの方が冷静になっていた。

「会社は辞めちゃって、どこにいるか分からなかったし、喫茶店で会ったときは言いたいこと言ってさっさと帰っちゃったじゃない。」

なんとなく責める事を言ってしまう。

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