手錠、そしてキスの雨を2
「俺と形だけでも付き合ってるんだから、いい加減ブラック企業の社畜みたいなこと言うのはやめろ。仕事よりもっと重要なことがあるだろうが」

熱を持った目でそう言われ、ペロリと唇が舐められる。華やかな顔が目の前にあるものだから、嫌でも顔が熱っていくのがわかるんだ。

「わ、わかんないよ!仕事より大事なことなんて……!」

「だったら俺が教えてやる。だから一緒に住んでんだろ」

男嫌いのくせに、何でこんなにも男に振り回されているんだ。苛立ち、戸惑い、ときめき、色んな感情が最近はぶつかって忙しい。前は仕事して家に帰って寝るだけだったから、ここまで感情は忙しくなかったのに……。

伏黒さんと二人で住むことになったマンションに着く。セキュリティ万全のいいマンションだ。こんなところ、いくら貯金があるとは言え、家賃が高すぎて一人では住む気になんてならない。

マンションの部屋へと向かう間、私が逃走するのを防ぐためなのか、伏黒さんはずっと私の腰に腕を回して抱き寄せてくる。正直、歩きにくい。
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