手錠、そしてキスの雨を2
少し落ち着いた頃、グレーのスーツを脱いでハンガーにかける。そして、部屋着の入ったクローゼットを開けた。クローゼットの中は伏黒さんの用意した服しか入っていない。

仕事ではずっとスーツを着ていて、部屋着もそれほど私は持っていなかった。一応、お出かけ用のものは何年も前に買ったやつがあったけど、仕事以外に出かけるとしたらスーパーくらいで、ほとんど着たことがない状態。そんな私の服の事情を見た伏黒さんは、色々な服屋さんで私に似合いそうな自分好みの服を揃えてくれた。

ちなみに、髪や肌のケアも一人で暮らしていた頃よりみっちりとされるようになり、おかげで髪などが前より綺麗になったのだ。

「これでいっか……」

淡い緑のワンピースを手に取って着替えが済んだ後、「三恋都、着替え終わったか?」と伏黒さんに声をかけられたのでドアを開ける。

「今日はそのワンピースにしたのか。似合ってるぞ」

伏黒さんはそう言って褒めてくれて、私は「どうも……」と言いながら俯く。男なんて嫌いだったから、伏黒さんと暮らすようになって初めて異性から褒められるっていうのを経験した。未だに慣れない。何か照れくさいというか、くすぐったい。
< 7 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop