手錠、そしてキスの雨を2
「はい、両手出せ」

伏黒さんに言われて素直に両手を出せば、私の両手に手錠がかけられる。これも伏黒さんの条件の一つ。家の中では手錠をすること。プチ監禁を楽しみたいらしい。どんな趣味だ。

「うん、やっぱよく似合うわ」

伏黒さんはそう言った後、私の腰を抱き寄せてまたキスをしてくる。今度は激しいものじゃなくて、唇が触れるだけの優しいキス。

「こっちのキスだと腰抜けないんだな」

「うるさい!」

ニヤニヤする伏黒さんに苛立ってそっぽを向く。伏黒さんがいつも余裕そうで、いつもムカついてしまう。きっと色んな女性を相手にしてきたんだろう。

「……あれ?」

何か、心がモヤッとしたような気がする。何だろうこの気持ち……。

「どうした?」

伏黒さんが華やかな顔をグイッと近付けてくるもんだから、私は慌てて俯きながら後ずさった。

「何でもない!」

キスした後みたいに顔が真っ赤になっているから、俯いたまま言う。もう本当に何なんだろ、これ。伏黒さんと暮らし始めてからずっと変だ。
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