仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
2.ひと月の新婚生活
風雅に押し倒された翌朝、私はキングサイズのベッドでひとり目覚めた。
寝起きの気分は最悪だ。昨晩は風雅の香りのするベッドで、怒りに打ち震えながら眠りについたのだもの。
アノヤロウ、私は恋愛感情がないって言ってるじゃない。仮面夫婦でいこうって言ってるじゃない。
お互いそうなんだから無理して夫婦っぽくしようとしないでよ!
同時に思う。
少なくとも、風雅は私のことを抱けるのだ。男として抱けるのだ。
私のことなんてキイキイうるさい小動物くらいにしか思っていなかったはずの風雅。ちょっとつついても壊れないおもちゃくらいに扱っていた風雅。
一応、私のことを人間の雌だとは認識していたのか……。
するとドアがノックされる。応える前に、ドアの向こうで風雅の明るい声が聞こえた。
「希帆ー、起きてるー? 朝ごはん作ったよー」
朝ごはん……風雅が?
私はのっそりと起きだし、ドアに近づいた。そっと隙間を作るように開けると、そのまま風雅が馬鹿力でドアを開け放った。
「おはよう、希帆! よく眠れた?」
「誰かさんのおかげで最悪の気分で寝たけど」
「あはは、初夜から子作り禁止令出ると思わなかった」
風雅はケラケラ笑っている。どうしてそんなにのんきなのよ。こっちは襲われかけて混乱と怒りが収まりませんが? 結局あれ以上は何もしてこなかったあたりが風雅らしいけど。