仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
「これから希帆のおうちに寄って、その足で俺たちの新居ね。希帆と一緒に住む部屋、色々探したんだ。きっと、気に入ると思うな」
「……はあ」
「なにしろ、希帆は台湾では人気のインテリアデザイナーだもんね。内装もちょっとこだわってるよ。あ、もちろん、希帆がここはこうしたいって言うなら、すぐに施工するから」

ぺらぺら話す風雅の車の助手席に、私はむすっとしたまま乗り込んだ。今すぐ、台北市の自室に帰りたい。だけど、台湾に戻るのは一ヶ月後の予定である。

私はこれから、左門風雅と結婚する。親同士の決めた婚約に従う。そして、風雅と一ヶ月の新婚生活を過ごすことになっている。




調布市にある私の実家に立ち寄り、両親に帰国の挨拶をした。両親は私と風雅がそろっている時点で笑顔。
そりゃ、嬉しいよね。ずっと結婚を避けて海外逃亡していた娘が、年貢の納め時とばかりに帰国したんだもの。

「風雅くん、希帆をよろしくねえ」

母は見たことないくらいの優しく笑っている。私に似て性格がキツイくせに、義息子にいいママの顔をしている。婚姻届けの保証人の欄を埋めながら父が言った。

「榮西グループの社長夫人が、希帆に務まるか不安だけど、風雅くんを支えられるよう私たちも力になるから」

榮西グループは、風雅のお父様の会社・榮西株式会社を頂点とした巨大企業体。風雅はそこの跡継ぎで、必然私はいずれ社長夫人になる予定である。
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