仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
4.異国の夜



「おいしかった。ご馳走様!」

風雅が手を合わせて大きな声で言った。元気いっぱいな二十八歳男子は、私の作った夕食を満足そうに食べ終えたところ。

「味、濃すぎなかった?」

皿をシンクに片付けながら尋ねると「ちょうどよかったよ」と明るい声が返ってきた。
明日から再び台湾という日、私は風雅に夕食を作った。

私との夕食のため、風雅は会食や仕事の予定を入れずにまっすぐ帰ってきた。ケーキをお土産に、期待たっぷりの様子で帰ってきた風雅に、正直緊張した。食べさせる相手はめちゃくちゃ料理が上手いのだから。
麻婆豆腐とスープ、チキンサラダという簡単な内容だったけれど、風雅は大喜びだった。
そうだ、風雅は私に激甘なんだった。たぶん何を出しても美味しい美味しいと食べてくれただろう。

ケーキもふたりで食べてしまい、あらためてお茶を淹れダイニングに戻ると、風雅はソファでだらだらと手足を延ばしている。リラックスしているようだ。こんなに早く帰ってくること自体稀だものね。

「希帆、ちょっとこっちきて」
「なあに?」
「いいからいいから」

呼ばれるままにソファに歩み寄ると、手を引っ張られ座らされた。

「風雅、まだ片付けが途中なんだけど」
「食洗器なら俺が回すし、シンクも磨くからいいよ。それより」

風雅がごろんと私のふとももに頭を預けてきた。膝枕の状態だ。

「風雅っ!」
「へへ、夢だったんだ。希帆の膝枕」

退かそうとぐいぐい頭を押すけれど、この男びくともしないわ。非力な自分が憎い。
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