仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
その晩、ベッドの中で私は風雅に語りかけた。
「風雅、私は本当に台湾の環境を整理してきちゃうけど、いいのね?」
「いいに決まってる。念願の完全同居だもんねー」
「風雅には整理すべき過去はないの? 清算しておいた方がいいこととか」
「それって女関係? だったら、ご心配には及びません。俺、希帆しか好きじゃないから。希帆と婚約した高校三年の時点で、そのへんは清算済み」
ぬけぬけと言われ、私は渋面になる。すると、風雅が腕を伸ばし、私を抱き寄せてきた。困ったことにこういう接触にも慣れ、拒否する気も起きない。
「希帆、そろそろ俺のこと信じてよ。浮気なんかしないよ」
「面倒事が嫌なだけ。嫉妬とかじゃないので」
「誓いのキス、する?」
結婚式を予定していない私たちは、誓いのキスをする予定はない。式を挙げた方が、風雅は喜ぶだろうか。
「しない」
私は敢えて素っ気なく言い、もぞもぞと身体を反転させ、風雅に背を向けた。風雅が背中から抱き締め直してくる。
「希帆って俺の腕の中にすっぽり全部隠れちゃうね」
「小さくてごめんね!」
「この感じが安心するんだよ。そういえば、出会ったその日にハムスターって言ったらめちゃくちゃ怒ってたよねえ。可愛かったなあ」
馬鹿にされていると思いながら、そんな最初の日の思い出まで大事にしている風雅を、素直に愛しいと思った。風雅は私に対して、いつも率直で愛情深い。