仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
「希帆の帰りを待ってるから、良い子で待てたらご褒美ちょうだい」
「ええ?」
あからさまに拒否の声をあげてしまった。風雅が肘をつき半ば上半身を起こし、私に覆いかぶさるような姿勢を取る。上から見下ろされると捕食されそうで怖いんですけど。
「変なことじゃないよ。キスとかハグとか」
「……まあ、そのくらいならいいけど」
『全然“そのくらい”じゃない!』と思う自分と『風雅がしたいならいいか』と思う自分がいる。
流されているわけじゃない。でも、私が受け入れたら風雅は嬉しいのだと思うと、拒否したくない。
「本当はどこにも行ってほしくないんだ」
風雅が背中から再び私を抱き締める。耳元にかかる吐息。風雅の寂しさが温度から伝わってくるようで、私は腕を伸ばし、彼の髪に触れた。
「風雅、仕事、大丈夫?」
「急に何?」
「新婚生活の三週間、毎晩遅くて働き詰めなの見てきた。お父様の代行をし続けるの、厳しいんじゃない?」
ふふ、と風雅が笑った。髪にじわっと熱い息を感じる。
「トップが倒れたなんて、敵には大チャンスだからね。内からも外からも崩しやすい時なんだ」
敵というのは、榮西グループをよく思わない人間が内外問わずいるということだろう。
風雅の祖父の代に興した榮西は、不動産業から人材サービス、介護や遊戯市場まで幅広く事業を展開する大企業へと急成長した。強引なこともしてきているはずで、面白くない人間はきっと多い。
「ええ?」
あからさまに拒否の声をあげてしまった。風雅が肘をつき半ば上半身を起こし、私に覆いかぶさるような姿勢を取る。上から見下ろされると捕食されそうで怖いんですけど。
「変なことじゃないよ。キスとかハグとか」
「……まあ、そのくらいならいいけど」
『全然“そのくらい”じゃない!』と思う自分と『風雅がしたいならいいか』と思う自分がいる。
流されているわけじゃない。でも、私が受け入れたら風雅は嬉しいのだと思うと、拒否したくない。
「本当はどこにも行ってほしくないんだ」
風雅が背中から再び私を抱き締める。耳元にかかる吐息。風雅の寂しさが温度から伝わってくるようで、私は腕を伸ばし、彼の髪に触れた。
「風雅、仕事、大丈夫?」
「急に何?」
「新婚生活の三週間、毎晩遅くて働き詰めなの見てきた。お父様の代行をし続けるの、厳しいんじゃない?」
ふふ、と風雅が笑った。髪にじわっと熱い息を感じる。
「トップが倒れたなんて、敵には大チャンスだからね。内からも外からも崩しやすい時なんだ」
敵というのは、榮西グループをよく思わない人間が内外問わずいるということだろう。
風雅の祖父の代に興した榮西は、不動産業から人材サービス、介護や遊戯市場まで幅広く事業を展開する大企業へと急成長した。強引なこともしてきているはずで、面白くない人間はきっと多い。