仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
「大事にしてもらえるわ。キホ、あなたも大事になさい」
「うん……そうする」
「希帆はもうこっちには来ないのかい?」

焼き餅用の生地をこねていた美芳のおばあちゃんが尋ねてくる。私はおばあちゃんの横に行き、肩に手を置いた。

「ひと月かふた月に一回のペースで来るわ。おばあちゃんの料理食べたいし」
「そうしたら、希帆はこの家に泊まればいいさ。ねえ、美芳」
「そのつもりよ。宿泊費はいらないから、日本のお土産を頼むわ」

美芳は明るく笑う。本当に彼女には頭があがらない。マネジメント料、ちゃんと払わなきゃ。

「今度、日本にもおいで。おばあちゃん、日本に来たことあるんでしょう?」
「三十年くらい前だよ。お相撲を見たね。次に行くならスカイツリーに登りたいよ」
「私は、キホの旦那を見たいわ。紹介してね」

楊家御一行の招待は風雅に頼めば明日にでも手配できてしまいそう。
でも、風雅を紹介かあ。人には好かれるタチだから会わせてもいいんだけれど、なんだか私が恥ずかしい。

それから私は楊家の夕餉に混ぜてもらい、初日の夜を過ごした。
風雅からはメッセージが届いていた。

【希帆、洗面台の化粧水の蓋が開けっぱなしでした。俺、閉めておいたよ。えらい?】

……ほかに何か言うことはないんかい。

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