仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
「わかった。今夜の宿は?」
「ホテル取ってあるよ。荷物も空港から送ってもらった」
「じゃあ、街を歩いて美味しいもの食べましょう」

MRTに向かい歩き出すと、風雅が手を繋いできた。私も抗わない。身体が軽くて、わくわくする感覚。
ああ、風雅に会えて嬉しい。手を繋げて嬉しい。一緒に食事をとれることが嬉しい。
自然とそう思える。
恋愛的な心情じゃなく家族的な感情で、私はこのひと月、風雅に会いたかったのだ。ものすごく会いたかったのだ。ひとりで眠るシングルベッドを物足りなく思う程度に。

「美味しい定食屋さんに連れて行ってあげる。あとかき氷も食べる?」
「食べたい。マンゴーが山盛りのやつでしょ?」
「そう、それ。あと美芳のところにも挨拶に行きましょう。風雅に会いたがってたからちょうどいいわ」

美芳や楊家のみんなのにやけ顔を想像すると、本当は紹介したくないけれど、風雅がこっちに来ていることはさっき知られてしまった。それなら挨拶させた方がいい。

「ついでに希帆の荷物、引き上げてきちゃおうよ。今夜は俺と一緒にホテルに泊まればいいじゃん。スイートだよ」
「いやよ、明日からまた風雅と一緒なんだから、今夜は楊家のみんなと過ごす」
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