仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
「ほとんど通じてるよ。台湾は台湾國語だからね。北京語とは少し発音が違うところがあるの。慣れたらわかるけど、観光だったら特に気にしなくていいよ。あと、御年輩の人は日本語がわかる人も結構いるから」

美芳のおばあちゃんも親の世代からならったそうで少し日本語が喋れる。さっきも風雅に日本語で「背が高いね」とか「日本のどこに住んでるの」なんて聞いていたっけ。

「あの家の人たち、あったかくていい感じだったね。希帆がいい人たちと暮らしていて安心した」
「風雅もそんな心配するのね」
「希帆はパワフルだけど、ちっちゃいからね。変なやつらに絡まれたら、ひょいっと抱え上げられてさらわれちゃいそうだなって思ってた」
「そんなに油断してないわよ」

日暮れが近づくとお寺は幻想的になる。
提灯に灯りがつき、蝋燭の火が揺れる。極彩色の屋根や装飾が灯りに浮かび上がる。
鐘の音、お経の声。線香の強い香り。
高い気温でぼやけた五感にダイレクトに刺激がくる。

「楽しいね、希帆」
「まあね」

風雅の横顔が灯りに照らされ綺麗だ。本当にこの男、顔は掛け値なしに整っているもんなあ。
その顔がくるんとこちらを向く。私を見てやわらかく笑うと、それだけで今この瞬間がキラキラ光るようだった。
私、なんだか変だ。暑さにやられちゃったのかな。


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