クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
「あ、バレた?」
「もう! 専務なんか嫌いですっ」

ぷい! と芽衣子にそっぽを向かれて、立場は見事に逆転した。

「ごめんごめん。つい魔が差してしまって」
「魔が差すってなんですかっ」
「だって、まだ君は俺の口説きを受けている最中だろう? けど俺は―――」

俺はそっぽを向いている芽衣子の耳元にそっと囁いた。

「君にキスしたくて、毎日うずうずしているから…」

そうして耳まで真っ赤になるほど彼女を恥じらわせてしまえば、もうこっちのものだ。

何もかもが初心で純粋で清らかで―――芽衣子のすべてが可愛くて仕方がない。
けど、いい加減はしゃぎ過ぎた。

「悪かったよ、そろそろ真面目に仕事に取りかかろうか。すまないが、コーヒーを淹れてきてもらえないかな。いつもより濃い目で」
「…かしこまりました」

逃げるように専務室を出て行く芽衣子を見送り、俺は一呼吸して仕事に集中し始めた。

とそこへ、入れ替わるように高田が入ってきた。
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