クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
「ああ。何本か持っているが…これは相当な一級品だな」
「ええ。扇面に使われている絹といい、上質竹を使って親骨に蒔絵まで施しているところといい、かなり値が張るものと窺えます」

と、高田と扇子を広げていると、亮子が「Wow!」と発音よろしく感嘆しながらやってきた。

「しかもデザインはモダンで素敵ねー! あ、でも、持ち手のところに装飾されている花は、男が持つには微妙じゃない? さりげなくだからまだいいけど」

と、亮子が指摘するのは、親骨に施されている菖蒲の蒔絵だった。
優美に描かれているが、確かに男性用に施すには違和感がある。

だが、あの完璧な品格と教養を兼ね備えた家元が、そんな配慮を欠くようなことをするだろうか。
むしろこの菖蒲の蒔絵には、何かもっと深い意味が込められているように感じる―――が、未熟な俺には見当もつかない…。

「とりあえず、すぐにでもお礼の品を送りたい。お礼の電話は先に俺が入れておくから」
「承知しました。…ですが専務、申し訳ありませんが、品はどのような物をお送りすればよいでしょうか」

有能だがこの種の事は高田は苦手としていた。
面目なさそうにしているが、正直、俺も困ってしまう。
もちろん亮子もあてにできないし…。
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