クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
芽衣子はまたきょとんとした顔をして続けた。

「菖蒲の花言葉は『希望』そして『期待』。常に身に付ける扇子にその象徴である蒔絵を施すことによって、新規事業が希望に富んだものになるようにと応援すると同時に、『私からの期待がかかっているということも忘れないでくださいね』という気持ちも込めているように思います。ある意味、専務へのプレッシャーと受け取れますね」

「贈り物にわざわざそんな意図を込めるなんて、厳しい方ですね」と芽衣子は苦笑いを浮かべる。

「なるほど…!」

俺は思わず膝をたたいた。
何から何までその見解に納得だった。あの家元ならやりかねない。

芽衣子に頼って正解だった。
芽衣子がそばにいてくれて、俺は救われた。

「芽衣子君、すまないが、返礼品選びは君に任せていいかな?」
「はい、もちろんです」

芽衣子は持ち前の愛らしい笑顔を浮かべた。
愛らしいだけでなく、今は頼もしさも感じる笑顔だ。

「送り先は華道の河泉流の小早川様ですよね?」
「すっごい!! どうして名前まで分かったのーー!?」

唖然として芽衣子と俺のやり取りを見ていた亮子が、もう我慢できないとばかりに素っ頓狂な声を上げた。
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