クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
目を丸めたものの、芽衣子は笑った。

「専務が華道とさっきおっしゃいましたから。そのような高価な扇子を用意できて、それにそういった意図を含ませるようなちょっと癖のある方は…あの方しか思いつきませんから」
「ちなみにお幾ら万円かしら…?」
「ええと、十万はいかないと思いますけれど…」
「ひぇえええ!」

亮子の奇声にくすりと笑って芽衣子は続ける。

「何か見合うものを見繕ったら、専務にご報告いたしますね。ご予算は同じくらいでよろしいですか?」

俺は大きくうなずいた。

「ああ。小早川様のご期待に十分応える形で、最適な品を見繕ってくれ」
「承知いたしました。…あ! 皆さんコーヒーが冷めてしまいますよ? 早く召し上がってくださいね…って、ミルクを忘れてしまいました…!」

「ごめんなさい…! 今持ってきますね!」と足早に給湯室に戻っていく芽衣子。

厄介なことが無事解決されて美味いコーヒーを楽しむ俺に、亮子が叫んだ。

「あのコ、いったい何者!?」

もう一口飲むと、俺はカップをソーサーに置いて、高田と亮子を見やった。

「芽衣子は、岸武文議員のご息女だ」

「え、それってもしかして…」

眉根を寄せる亮子に対して高田の顔は変わらなかった。
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