クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
高田には芽衣子の素性を調べさせた。
すでに状況は十分に理解している故の落ち着きだと思うが、俺がこれからさらに打ち明けることを聞けば、さすがにその表情も曇るかもしれない。

「二人には最初に詫びておかなければならないな。芽衣子は公益社団法人日本文化保護協会の顧問を務められている岸議員の一人娘だ。そして、間もなくそのお父上が決めた婚約者と結婚を控えている身でもある」

沈黙が走った。

「後者の部分は、初耳ですね…」

それを破ったのは高田の方だった。
案の定その表情は、苦々しいものに変わっていた。

「すまない」

俺は頭を下げるように俯いた。

「けれども俺は芽衣子を諦めることなどできない。今後のことは重々覚悟した上で、俺は芽衣子を秘書に―――妻にしたいと思っている」

ふぅ、と高田の諦めるような吐息が聞こえた。

「これからますます忙しくなりそうですね」
「暇になるの間違いじゃないの? 下手したら、雅己は責任をとって降格ってこともありうるわよ」

すでに覚悟決めた様子の亮子が、茶化すように言った。

「そうはしないさ。俺だってここまで漕ぎ着けた意地がある」
「お母様には―――代表取締役にはどう申し開くおつもりで?」

胸を張った俺だが、母を話題に出されるとつい苦笑いが漏れる。

「さぁな、これから考えるところだ」

再び沈黙が流れた。
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