クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む～運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です～

つまり、新規事業とはこういうものだ。
芸道、音楽、伝統工芸…日本文化に関連するありとあらゆる文化財を集約した超大型ポータルサイトを作り、日本文化をもっと身近に意識してもらい、保護、発展させていくというものだ。

具体的には、ポータルサイトを介して芸道や伝統工芸の担い手と享受する側をもっと簡単に且つ深く繋げる。
それにより高まった関心を消費や伝播に繋げ、日本文化全体の発展の足掛かりとする。
そしてひいては、深刻化している後継者問題解決の糸口に役立ててもらうという狙いもあった。

「今までにない試みだ。成功させるには、まずはポータルサイトの充実が不可欠であり、それには担い手側の理解と賛同が必要だった。そこでまずは、各分野で権威や実績のある方たちに協力を仰いだ。華道の最大流派である河泉流へ歩み寄ったのも、そのためだ」

俺はタブレットをタップし賛同者リストを表示した。

「すごい…錚々たる顔ぶれですね」
「だろう？　どこも歴史があってそれ故に因習的なところが強くて、なかなか理解いただけないことが多かったよ」

さすが芽衣子にはおおよその人物と面識があったのか、リストを興味深げに眺めている―――が、不意に目の動きが止まったかと思うと、みるみるうちに顔を強張らせていく。
気付いたようだ。