クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
「だからとある機関を頼った。公益社団法人日本文化保護協会。有形無形問わず日本文化に通ずるありとあらゆる文化財を保護、支援し振興する団体。そこの実質的トップである岸議員―――君の御父上に」
「…」
「父上はすぐに理解と協力の意を示してくださった。リストに載っている人物のほとんどは、父上がお口添えをしてくださった方達だ」
「そんな…」

芽衣子は呆然とタブレットをデスクに置き、重い重圧に耐えるように背中を丸めた。

「どうして…ここまで知っていながら、どうして私を…」
「理由なんていつも言っているだろう? 君を愛しているからだよ」
「…」
「この偶然を知った時はもちろん驚いたけれど、俺はますます確信したよ。やっぱり、君と俺の出会いは運命なんだって」

「いいえ…!」と芽衣子は激しくかぶりを振った。

「私は今日付けで辞めます…! 専務にご迷惑をかけるわけには…!」
「ご迷惑? つまり、君の結婚話を破綻させて父上の不興を買ってしまえば、この新規事業が立ち行かなくなると」
「…」
「残念だな、見くびられたものだ。父上に頼ったのはそれが一番効率的だと判断してのこと。協賛がなくともどうにでもなるし、してみせる。それとも君は、俺が父上なしでは何もできない無能な男とでも思っているのか?」
「そんなことは…」

俯く芽衣子の前に立って、俺はその震える肩に手を添えた。
< 122 / 232 >

この作品をシェア

pagetop