クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
雅己さんは、新規事業に差し障るのも覚悟の上で、私を選んでくれた。
その雅己さんの想いに応えるためにも、戸惑っている場合ではない。

「申し訳ありません」

私は頭を下げ、毅然と北村さんを見据えた。

「父には頃合いを見て言うつもりでしたが、私には他に想う人がいます。だから北村さんとの結婚には応じられません」

急に手首を掴まれた。
その強さは、血の気が引くくらいに強かった。

「僕にはあなたの言っていることの意味が解らないけど。結婚に応じない? つまり、僕の家とあなたの父上に泥を塗るということで?」
「そんなつもりは…」
「いや、そういうことだというくらい何不自由なく育った無知な女のあなただって解るだろう? 破棄なんて、絶対に認めない」
「離してください…痛い…っ…!」

あまりの強さに悲鳴をもらすが、むしろ掴む力はさらに強くなり、彼の顔がますます冷ややかになっていく。

「いちいち喚くなよ。政治家の妻になる女が、このくらいのことで根を上げてどうするんだ」
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