クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む～運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です～

不意に、ピクリと身じろいだかと思うと、色気のある吐息をたてて専務がゆっくりと瞼を開けた。

その様子を見ていた私をぼうとした目で見つめ、ふっと微笑むと掠れた声で言う。

「…そんなに見つめて、キスでもしてくれるつもりだったの？」
「あ、あの、ごめんなさい…遅くなってしまって…」

専務はゆっくり身を起こすと、顔を赤くさせてしまう私の頬を優しく撫でた。

「俺こそすまない。つい眠ってしまった。…素敵なワンピースだね。よく似合っている」

と、微笑む専務を見て、ほっとする。
亮子さんが貸してくれたワンピースは淡いピンクのノースリーブで、着るつもりだった私が持っているベージュのケープスリーブのものよりずっと素敵でディナーデート向きだった。

けれども、私の安堵はすぐに終わる。

突然、専務が私の手首を取って、見入った。

「どうしたの？　この痕」