クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
私はさっと血の気が引くのを覚えた。
専務が指摘するのは無理もない。北村に強く握られた手首には、いつの間にか青く鬱血していた。
その禍々しい色にあの北村の狂気めいた言動を思い出して、背筋に冷たいものが走る。

「何があった? 誰にやられた?」
「……」
「帰宅した時か? 他に…乱暴はされていないのか?」

畳みかけるごとに固くなっていく専務の声。
黙りこくることしかできない私に、焦れているのが伝わってくる。

「ごめんなさい…」

私は声を絞り出した。

「やっぱり、私とあなたが結ばれることはありません…。あなたにはきっと、あなたが想像する以上の苦労をおかけしてしまう…」

言いながら、私は涙を零していた。
専務は私の頬を両手で包み、言い聞かせるように優しくゆっくりと言う。

「すべてを尽くして最善の方法をとる。俺を信じてほしい」

けれども、私の涙は止まらない。

「困ったな…。君は、泣いても可愛いね」
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