クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
「でも…」
「いいんだ。芽衣子に責任は絶対負わせないから」
「でも…っ」
「でもじゃない」
「でもでも…んんっ…」

駄々っ子みたいに「でも」を繰り返す私の唇を、雅己さんがキスで封じる。

「だっ、だめ…っ」
「だめじゃない」
「…んん…っ!」
「はは。芽衣子はここが弱いんだよな。昨日、よく調べたから、知ってるよ…」
「ご、ごまかさないで…っ、んん…!」

甘い攻防が展開される部屋に、電子音が響いたのはその時だった。

「スマホ、また鳴ってる…っ」
「社用は電源を切ったよ。君の?」

私の設定音では無かった。首を振る。

雅己さんは出るつもりは毛頭ないらしく、すっかり攻防に疲れ切ってしまった私をいいようにして、愛撫を続けていく。

弱い首筋に舌を這われ、耐え切れず声を漏らす私。
その間も、スマホは変わらず場違いな軽快な音楽を鳴らし続けている。

「…うるさいな…」

雅己さんは床に落ちていたスマホを掴むと、ろくに画面を見ずにスワイプした。

「あとで掛け直しま」

言い切らない内に、スマホの向こうから、女性の穏やかではない声が聞こえてきた。
雅己さんの眉間に皺が寄った。

「なんだ母さんか…」
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