クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
雅己さんの、お母様…。

思わず私は押し黙って肌掛け布団を身体に巻き付ける。

お母様―――つまり、この綾部ホールディングスを女で一代で成長させた、敏腕女性経営者。

一体、どんな女性なのだろう。
雅己さんには、どんなふうに接する方なのだろう。

いけないと思っても…雅己さんとの会話がついつい耳に入ってしまう。
しかも、お母様の声が少し尖っているように聞こえるからなおさらだ…。

雅己さんも若干辟易しているようで、終始口調がそっけない。

「はぁ今から? 何考えてるんだよ」

と、雅己さんがワントーン上げて言ったその時だった。

ピンポーン

インターホンが鳴った。

誰だろう…?

通話中の雅己さんは対応できないからと、私は床に放置されていた貸してもらったガウンを羽織る。

「待っ…芽衣子」と、言いかける雅己さんを残して、インターホンの画面を確認する。

着物を着た女性が、耳にスマホを当てて立っていた。
綺麗に髪を結い上げたその姿からは、画面越しでも気品の良さが伝わってくる。

カメラの場所に気付いたのか、手を振って何か喋っている。
その口の動きと、スマホから聞こえる言葉のイントネーションが一致する気がした。
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