クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む～運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です～

「まさか…もうすでに情報を聞きつけていて…この箱を開けた途端、ドカン！　…とか？」
「小学生みたいな発想を言うな。あのやり手の代表取締役のことだ、邪魔者を消すならもっと巧妙にやるだろ」
「じゃあこんな大きな箱で盛大な贈り物と喜ばせておいて、いざ開けたら小さな手紙で一言『雅己と今後もお付き合いを続けるなら、どうなるか解かっていますね』とか…」
「おいおまえら…人の母親をサイコパスみたいに言うな」

深刻な顔で怪しむ高田さんと亮子さんの背後に立って低い声で嗜めると、雅己さんは「芽衣子、開けてみろ」と私を促した。

「わぁ…素敵…」

長方形の薄い箱に包装されていたのは、爆弾でも手紙でもなく綺麗な着物だった。

淡い黄色地に薄紫の桔梗の文様が施された今の季節にぴったりの涼しげな紗で、モダンにデフォルメされた桔梗の文様が若い女性向けの印象を与えるけれども、一目で上質と分かる絹を使った美しい風合いをした品だった。
着物の上には、水色の和封筒に同じく和紙の一筆箋があって、達筆な字で「これを着て今度お食事に行きましょうね。女子会というものですよ。」と書いてあった。

「母さん…今すぐにでも行きましょうってノリだな」

感極まって言葉を失っている私の横で、雅己さんが苦笑いまじりに呟いた。