クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
『ついこの間までは、『おまえにはまだまだ綾部屋を任せるわけにはいかない』と思っていました。それは、単におまえや取り巻きが未熟だったからではないのですよ』
母は厳かに俺に言った。
『守りたいものが、まだおまえには無いように見えたからです』
『守りたいもの?』
『夫に裏切られ実家も廃業寸前にまで追い込まれ、私はすべてを失ったかのように絶望しました。でも、そんな私を救ってくれた人々がいました。今も働いてくれている山田さん然り、古いご贔屓様、数多の取引先…そしておまえ』
母は穏やかに俺に微笑んだ。
それは、俺にいつも向けてくれた母としての慈愛に満ちたものだった。
『自暴自棄に陥りかけた私を留まらせてくれたのは、まだあどけない幼子のおまえでした。この子を守りたい、たった一人の息子とささやかでいいから平穏な暮らしを送りたい。その願いのために、私は現実と立ち向かう決意を固めました。そうしたら、そんな私を支えてくれた多くの仲間や恩人に出会いました。彼らと苦境を一緒に乗り越えたい、彼らに恩返しがしたい、いつか必ず彼らを救いたい―――その一心で頑張っていたら、いつの間にかこの綾部ホールディングスが出来上がっていました。私がここまでやってこられたのは、『守りたいもの』があったからこそなのよ』
母は厳かに俺に言った。
『守りたいものが、まだおまえには無いように見えたからです』
『守りたいもの?』
『夫に裏切られ実家も廃業寸前にまで追い込まれ、私はすべてを失ったかのように絶望しました。でも、そんな私を救ってくれた人々がいました。今も働いてくれている山田さん然り、古いご贔屓様、数多の取引先…そしておまえ』
母は穏やかに俺に微笑んだ。
それは、俺にいつも向けてくれた母としての慈愛に満ちたものだった。
『自暴自棄に陥りかけた私を留まらせてくれたのは、まだあどけない幼子のおまえでした。この子を守りたい、たった一人の息子とささやかでいいから平穏な暮らしを送りたい。その願いのために、私は現実と立ち向かう決意を固めました。そうしたら、そんな私を支えてくれた多くの仲間や恩人に出会いました。彼らと苦境を一緒に乗り越えたい、彼らに恩返しがしたい、いつか必ず彼らを救いたい―――その一心で頑張っていたら、いつの間にかこの綾部ホールディングスが出来上がっていました。私がここまでやってこられたのは、『守りたいもの』があったからこそなのよ』