クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
俺の話を聞きながら、岸議員は顔を強張らせていった。

「実は北村君のことは、私も気掛かりではあった。娘とのやりとりを報告してきた時の彼の様子は、著しく冷静さに欠けていたからな。どうやら彼には、裏の顔があるらしい…」

と、額に手をやり、参りきったように目を伏せる。

「まったく、呆れるばかりだな。良かれと思ってやったことは、すべて裏目に出てしまう…。娘の幸せをどんなに思っても、それが娘に届くことはない…」
「お言葉ですが…。それはきちんと娘さんと会話していないからではないですか?」

岸議員は額に手を当てたまま俺を見やった。

「一度でも、あなたの気持ちを芽衣子さんに伝えたことはありましたか?」

再び目を伏せたその顔が曇っていく。
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