クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
「そう言えば、お母様とはね…」

雅己さんのお母様との関係も、最初の頃よりももっと深まっていた。

「今度一緒に京都に旅行に行こうって相談をしているの。もうすぐ京都では紅葉が始まるでしょう? 紅葉狩りも兼ねてスイーツ巡りしましょう、って」
「なんだか、母さんとは俺以上に親子っぽくなってるな」

雅己さんは笑った。
「だって」と私ははにかむ。

「私には母の記憶がないから、お母様が本当のお母さんのように思えて…なんて言ったら、雅己さん嫉妬する?」
「はは、母親を取られて今更嫉妬する歳じゃないよ。むしろ逆。俺と母さん、どっちといる時間が楽しいの?」
「そんなの…選べないわ…!」

イジワルな質問に頬を膨らませる私を、雅己さんはさらにからかう。

「しかもここ最近はお父上と過ごす時間もあるから、ますます俺との時間が減っているじゃないか。最愛の恋人と過ごす時間よりも、どちらかの親と一緒にいる時間の方が多いんじゃないのかい?」
「ふふ、そうかもしれないわ」

強気に受け流すと、私は逆にイジワルをし返す。

「近い内、お母様に父と会っていただくことになっているのよ。三人でお兄ちゃんの新作歌舞伎を観に行くことになっているの」

「ああ!」と案の定雅己さんは不満げな顔になった。
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